「小児外科の新設によせて」

副院長・小児外科部長 大塩猛人 

 本年4月当院に赴任し、新しい診療科として小児外科を開設致しました。小児外科の診療範囲は出生前の胎児から15歳までの小児を対象としています。一応、脳神経外科、心臓外科、整形外科などを除く、消化器および一般外科的な子供の疾患について診療を行ないます。なお、小児に限定した呼吸器、泌尿器、婦人科的疾患も含んでいます。  
 
 私は国立療養所から名称を変更して開設間もない香川小児病院に外科医長として赴任して35年間勤務しました。赴任当時は小児外科の認知度は低く成人外科の医師が片手間で診療していましたが、その後小児外科患者は小児外科専門医が診療できる四国唯一の病院になりました。患者は四国四県から来院し、愛媛県では西条市からも来院していました。  
 
 香川小児病院を定年退職後、招聘されて北関東栃木県那須塩原市の国際医療福祉大学病院の小児外科教授として3年間勤務しました。赴任時には、当大学病院には小児外科の診療科はなく新しく開設となりました。病院は栃木県の県北地方に位置しており、人口は四国中央市よりやや多い地域となりますが、小児外科の診療は空白地域でありました。私が赴任するまでは、患者は家族に連れられて1時間以上を掛けて県都宇都宮市以南に出かけなければなりませんでした。しだいに地域の小児の診療をする医師から信頼され、そして地域住民の認識も向上して、新生児から15歳までの手術患者数は3年目には年間100件を越えるまでになりました。  
 
 この度、出身地の四国へ帰って来て、縁が有り当四国中央病院に勤務することになりました。当院でも小児外科は新設診療科であり、私に取っては3度目の診療科の立ち上げとなります。前任地の国際医療福祉大学病院と同様に、当地では周辺には小児外科診療が可能な施設はありません。  
 
 我が国では小児外科専門医は少なく、さらに日本小児外科学会が認定している小児外科指導医は、四国四県においては私を含めて6名の医師のみであります。愛媛県では松山市とその周辺の病院に勤務しています。医療が細分化され進歩した現代では、小児の外科的疾患は十分な知識と経験を備えた小児外科医が行なうべきであります。また、地域の子供達が家族に連れられて遠方まで受診する事は、患児はもとより家族に取っても大きな負担であります。そこで、私の40年以上にわたる小児外科診療経験が、当地および近隣の悩める子供達に広くお役に立てればこの上ない幸いと考えています。

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